この作品は昨年7月に刊行された重松清著の連作短篇集『青い鳥』の中から、その表題作(初出:小説新潮2006年12月号)を映画化したものです。
原作『青い鳥』は、吃音の臨時教師、村内先生と、彼が派遣されたある中学校の生徒たちとの交流を通し、今この国に顕在する中高生のいじめ問題に真正面から取り組んだ作品です。いじめによる子供たちの自殺が後を絶たないことへの、明確な分析や解決法を誰もが見つけ出せずにいるという昨今の状況を鋭く抉り、広く多くの読者たちに、大きな反響と静かな感動を呼びました。
しかし、この作品の持つ魅力は、単にいじめ問題に一石を投じるという社会性や、ある種のメッセージのみにとどまりません。
なによりも読者の心をつかんだのは、吃音という稀な造形を通して描かれる、主人公村内先生の人間としての魅力にあります。自らのハンディキャップを決してマイナスに捉えるのではなく、だからこそ「一番大切なことを伝えたい」と、懸命に、「本気の言葉」で子供たちに語りかけ、不器用なまでに物事と人間の本質を見つめようとする彼の言動は、時に過激にも見えます。しかしその視線は決して揺らぐことなく、人間対人間として、真の温かさで真っ直ぐに生徒たちに向けられているのです。
吃音の教師役に挑戦した阿部寛は村内先生役を自然体で演じています。子供たちを見つめる無条件にやさしい眼差しで、原作とは一味違った村内先生像を作り上げています。あらゆる役柄を幅広く演じきってきた彼の演技力は、今回の役作りでも、村内先生をよりリアルに見せています。
園部役の本郷奏多は映画『シルク』『テニスの王子様』などで多彩な役に挑戦しているのですが、今回は彼の真骨頂でもある“繊細さ”で見事に14歳の多感な少年を演じています。
本作が監督デビューとなる中西健二は、灘高・東大卒という俊英。今後の活躍に目が離せない期待の正統派監督の誕生です。
主題歌を歌うまきちゃんぐは、06年ヤマハ・ティーンズ・ミュージック・フェズティバル全国大会に中国四国代表として出場し、本年1月にバップよりマキシシングル「ハニー/ちぐさ」でデビューした20歳の新鋭女性シンガーソングライター。切ないメロディと飾りのない言葉が映画の物語性をいっそう引き立てています。



